竪穴住居

以前は「竪穴式住居」と呼ばれていましたが、最近の研究では、住居だけでなく祭祀施設や集会所の機能もあったようなので「竪穴建物」と呼ぶようになっています。今回は主に住まいとして取り扱うので「竪穴住居」と呼びます。

竪穴住居のはじまり

竪穴住居は誰が発明したと思いますか?
建築史家の太田博太郎氏によると、竪穴住居もしくは、竪穴住居の元になった住居はシベリアから入ってきたといいます。その頃は氷河期で日本とシベリアは陸続きでした。
最初は小型の竪穴住居だけでしたが、時代が新しくなってくると集落が大きくなるにつれて10mを超える大型のものが作られました。

縄文時代では狩猟や採集が中心だったので丘の上に集落がありましたが、弥生時代になると稲作が始まるので平地に移ってきます。

竪穴住居は、縄文時代の住居として知られていますが、意外と最近まで使われていました。日本で最古の竪穴住居は、今のところ、大阪のはさみ山遺跡で発見された約2万年前のものと言われています。しかし、これは例外みたいなもので、一般的になったのは1万年前ぐらいからと考えられています。

竪穴住居の年代を判定する方法は、地層をから判断する方法、一緒に出土した土器などの遺物から推測する方法、放射性炭素年代測定があります。どれか一つだけを頼りするのではなく、これらの方法を複合的に利用して判断するのが一般的です。

縄文時代の有名な遺跡は、青森の三内丸山遺跡があります。ここは縄文時代中期、約5000年前ぐらいの遺跡です。竪穴住居・高床建物など約780軒の建物跡が見つかっています。三内丸山遺跡は「北海道・北東北の縄文遺跡群」として世界遺産に登録されました。

竪穴住居の構造

 

竪穴住居の特徴は、50cm程度の穴を掘ることが有名です。この理由は定かではありませんが、室内を夏は涼しく、冬は暖かく保つ説があります。地下の温度は、外気温の影響を受けにくくなっています。その理由なのか、北海道函館市の大船遺跡では2m以上掘った竪穴住居が見つかっています。
弥生時代になると水田の近くに建てるため、地面の湿気が多くなります。そのため、竪穴の深さは浅くなっていきます。
弥生時代の登呂遺跡の竪穴住居は、周囲に溝を掘りドーナツ状に盛土をして擬似的な竪穴住居にしています。

竪穴住居の間取りはご存知の通りワンルームです。地域や時代によって、円形・楕円・方形・隅丸方形・長方形などさまざまな形がありました。内部には柱が4~6本建てられました。内部が一段高くなっている場合もあり、ベッドだったとか棚だったとか言われていますがよくわかっていません。竪穴住居には炉がありました。最初は中心にありましたが、古墳時代になると、平面の端に移動して竈になりました。

竪穴住居の屋根構造は、実はよくわかっていません。柱や屋根がいくつか出土していますが、そのまま残っている竪穴住居がないからです。遺跡の柱の穴と、土器に描かれた絵や家型埴輪、家屋文鏡などを参考に復元されています。

屋根は、伏屋式と壁立式があります。
伏屋式は、一般的に竪穴式住居のイメージでしょう。これは、「鉄山秘書」のたたらの高殿を参考に建築史家の関野克氏(まさる)が、昭和26年に復元した竪穴住居の影響だと思われます。
壁立式は竪穴をぐるりと一周囲んだ柱の穴が見つかればそれとわかります。この形式は三内丸山遺跡が有名です。

屋根は、茅や草で葺いていることが多いと思われますが、土で葺いていたと思われる例も見つかっています。土の屋根のほうが断熱性能に優れていますが、道具があまりないので作るのは大変そうです。
屋根の構造は、炉があったので排煙処理をしなければなりません。そうなると、単純な三角屋根ではなく、少し複雑だったと予想されています。家型埴輪や家屋文鏡を見てもそれがわかります。
柱の間隔が均等な竪穴住居も見つかっています。縄文尺といわれる「35cm」を基本単位として作られている例は、富山の不動堂遺跡、岐阜の下田遺跡、青森の三内丸山遺跡などがあります。このことから、この頃には論理的な思考を身につけていたのかもしれません。

竪穴住居はいつまであったのか?

竪穴住居のイメージは、縄文時代・弥生時代のイメージが強いですが、近畿地方では平安時代まで、岩手県の柿ノ木平遺跡・堰根遺跡では室町時代まで庶民の住宅として使われていたことがわかっています。栃木県の飛山城跡に復元されている中世の貯蔵庫だと思われている建物と、島原の乱の様子を描いた屏風にある小屋が竪穴建物に似ているのですが、個人的には、継承してきた工法としての竪穴住居ではなく、ただの偶然だと思います。

まとめ

新しい発見があるたびに、「竪穴住居は実は◯◯だった」と力説する人がいますが、約1万年も主流の住まいだったので、適当に作った竪穴住居もあれば、きちんと設計して作った竪穴住居もあったでしょう。建物の形式は、地域や年代で多種多様に分かれているので「竪穴住居の正解はこれ」というものはないと思ったほうがいいですね。


参考資料

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